<放熱材とは>
放熱材は電子機器にとって欠かせないキーテクノロジーとなります。発熱源から効率的に熱を散逸させることで、電子機器の温度上昇を抑制することができて性能の向上に繋がります。
<放熱材の機能>
半導体デバイスで構成されている電子機器では、高速・高パワー動作する半導体チップが発熱源となり、その熱を半導体チップ内に留まらせず如何に排熱用ヒートシンクまで効率的に流すかが鍵となります。例えば単に半導体チップを搭載したパッケージと排熱用ヒートシンクを接合した場合、パッケージ及びヒートシンク表面の凹凸のために空気を挟んだ構造になってしまい十分に熱が伝わりません(熱伝導が悪い)。そこで、パッケージとヒートシンクの間に放熱材としてサーマル・インターフェース・マテリアル(TIM)材を挿入することで、より効率的に熱が流れるようになり放熱効果が大きくなります。
TIM1:パッケージ内のSiチップとパッケージ蓋(リッド)との間のTIM材
TIM2:パッケージ外側とヒートシンクとの間のTIM材
主に①放熱グリース、②放熱パッド、③熱拡散シートの3つのタイプに代表されます。
① 放熱グリースはシリコーン樹脂に「熱伝導性フィラー」を充填させたコンパウンド材が主流です。材料は液状なので、ディスペンサーといわれる装置による吐出あるいは印刷のようなコーティングを用いて必要な領域に塗布します。硬化タイプ(固まる)と非硬化タイプ(液状のまま)があり、要求に応じて使い分けされます。フィラー充填量を増やせば熱伝導性が向上するので、求められる放熱性能に見合った配合のコンパウンド材を選ぶことがポイントです。ただし、硬化前は液状あるいはゲル状なのでパッドタイプよりも薄く塗ることができるため、低い熱伝導率の材料であっても効率よく熱を流す(低い熱抵抗を得る)ことができるのが特徴です。
参考:信越シリコーン様のウェブサイトから
② 放熱パッドも同様にシリコーン樹脂に「熱伝導性フィラー」を充填させたコンパウンド材が主流です。材料は圧縮性のあるパッド状の構造であり、必要なサイズ、厚さに加工して利用します。構造や熱伝導に異方性のあるフィラーを配向させればパッド表面垂直方向の熱伝導率を向上することができます。このように垂直方向の熱伝導率をグリースよりも向上できるため、厚さと圧縮性が必要な適用シーンにおいても効率よく熱を流す(低い熱抵抗を得る)ことができるのが特徴です。
参考:積水ポリマテック様のウェブサイトから
https://polymatech.co.jp/c-1.html
参考:デクセリアルズ様のウェブサイトから
③ 熱拡散シートはシート面内方向に熱を拡散するシートになり、TIM材というよりはヒートスプレッダーと呼ばれる放熱材になります。特殊な製法で作られた面内方向に高配向した黒鉛(グラファイト)を主成分とするシートが主流です。面内方向の熱伝導率が面垂直方向よりも1000倍以上も大きいことが特徴です。電子機器においては局所的に発熱が大きくなるホットスポットの問題を抑制することができる放熱材になります。
参考:パナソニック様のプレスニュースから
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000352.000003442.html
参考:カネカ 様のウェブサイトから
https://www.elecdiv.kaneka.co.jp/products/heat-measures/graphite-sheet.html